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W.A.モーツァルトらの「オリエントの夢」

 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの時代、ヨーロッパで「異国情緒」といえば、オスマン・トルコのことを真っ先に想定することが圧倒的に多かったようです。この「伝統」は中世以来とくに音楽の世界で顕著で、たとえばベートーヴェンの第9交響曲(1824年・ウィーン初演)には、市民革命軍の凱旋行進を想定したかのような箇所(筆者私見)で、トルコ風の軍楽が用いられていたりします。

 第二次世界大戦後から、クラシック音楽の演奏は史的な検証を厳格に行なう流れが顕著に大きくなってきていますが、コンチェルト・ケルンは、そのようなアプローチを行っている代表的な演奏団体の一つです。そのコンチェルト・ケルンが、現代トルコの同様のグループ・サルバンドと共演したCDが「オリエントの夢」です。

 このCDは、グルック、J.M.クラウス、ジェスマイア、W.A.モーツァルトといった18世紀ヨーロッパの音楽家達がトルコなどへの憧れをもとにつくった作品の数々と、トルコの伝統音楽の傑作の数々をあつめて、聴く者に楽しいひと時を贈ってくれます。現代のトルコにも行ってみたくなるような楽しいCDです。

 W.A.モーツァルトといえば「トルコ行進曲つき」(K.331・イ長調)と題されたピアノ・ソナタも有名です。モーツァルトの時代、ひいていたピアノは今のそれより小さく、またその仕組みも現代のものとは異なっていました。くわえて弾き方も、奏者が即興を加えることが多かったのです。
 
 そのようなモーツァルト時代の奏法を意識したCDがいくつか出ていますが(*)、なかで一昨年にアンドレアス・シュタイアーが出したものは出色な気がします(ちょっとジャケットが、日本人の私には無粋に見えますが――)。アマゾンのカスタマー・レビューでも【ちょっとピアノを習った人であれば、頭に入っているはずのあの楽譜が、原型を留めないほどに崩壊して再構築されていくさまは、まさにスリリング。百花繚乱トルコマーチを堪能してください!】(ニゴチュウ)などと絶賛されています。

 シチリアーナ風の主題を変奏する第1楽章から、ジャズのピアノソロのように豊かな即興をくわえた「トルコ行進曲」(第3・終楽章)にいたるまで、シュタイアーの弾く「トルコ行進曲つき」はエキサイティングな魅力にあふれています。このCDは、K.330(ハ長調)、K.332(ヘ長調)でもシュタイアーが稀代の名人芸を聴かせます。

 * Temenuschka Vesselinova(テメヌシュカ・ヴェッセリノーヴァ)、Tuija Hakkila(トゥイヤ・ハッキラ)、など:バッハや、モーツァルトの時代は、同じ曲でもピアニストによって、即興の仕方などを大きくかえて演奏するのが通例だったので(シュタイアーもそうですが)そのやり方を真似た、ヴェッセリノーヴァやハッキラの演奏も、それぞれにユニークで面白いです。

(http://www.janjan.jp/ 市民メディア・インターネット新聞記事より)

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